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青森地方裁判所 昭和49年(む)135号 決定

被疑者 加藤兼文

主文

1  検察官が昭和四九年九月四日、被疑者と弁護人との接見を同月六日と指定した処分を取消す。

2  検察官は、被疑者と弁護人とを昭和四九年九月五日午後五時から同日午後七時までの間において引続き一五分間接見させなければならない。

理由

一、本件申立の理由は、要するに、「検察官は、昭和四九年九月四日、弁護人からの同日午後に被疑者と接見したい旨の申出に対し、接見の日時を同月六日と指定したが、右処分は、弁護人の活動を著しく制限するものである。」というにある。

二、検察官および弁護人の意見、その他関係資料に基づいて検討すると、

(一)、被疑者は、公職選挙法違反被疑事件について逮捕され、昭和四九年八月二四日から勾留されていること。

(二)、弁護人は同年九月四日午後三時ころ電話で検察官に対し、同日午後に被疑者と接見したい旨申出たところ、検察官は右弁護人事務所に接見の日時の件で電話連絡したところ弁護人が不在であつたため、同事務所事務員に接見の日時を同月六日にしたい旨申入れ(時間の指定はない。)、接見指定書は作成していないこと。

(三)、弁護人は、すでに同月六日(金)は、午前中、野辺地簡易裁判所の、午後は青森地方裁判所十和田支部の各裁判期日の指定を受けていて右検察官申出の日時に接見することは不可能であること。

(四)、弁護人は同年八月二七日、同月三一日の二度被疑者と接見していること。

(五)、検察官においては、被疑者に対する捜査は、同年九月四日は夜間に於てもなされる予定であり、同月五日も午前中から開始され、夕刻まで予定されていること。

が認められる。ところで、検察官の弁護人事務所への前記連絡は、実質的には同月六日を弁護人と被疑者との接見の日とする旨の指定処分があつたものと判断せざるを得ない。

以上の諸点を総合すると、本件捜査の必要性を十分考慮しても、検察官の右処分は結果として、弁護人の活動を著しく制限するものといわざるを得ず、これを主文第二項のとおり定めることが相当であると判断される。

よつて、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第二項により主文のとおり決定する。

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